電話機
年末に治療院の電話の子機がおかしくなって、電話機を買い換えなければならなくなった。新しく買った電話機は流行りのデザイン家電のものですっきりとしたデザインで、細部まで作り込まれていて、手にした感じも見栄えもいい。取り付けて自分の携帯電話から鳴らしてみると呼び出し音もいい感じだった。
治療中に取り付けたばかりの電話の呼び出し音が鳴り、それを聞いた古くからの患者さんは「気持ちが明るくなる音でいいわね」と仰った。掛かってくる電話がいい報せのような気がする、そんな音である。この電話を買って良かったなと思ったのである。
しかし、この電話機のとんでもないところを発見した。 仕事が終わったあと色々機能が付いているので、説明書を読んで、留守番電話にしてみた。応答メッセージが英語で流れた。英語ではちょっと具合が悪かろうと説明書通りに操作して日本語の応答メッセージに切り替えた。その瞬間、「えっ・・・。どうしたの」と思ってしまった。
オシャレな電話機から流れてきたのは女性の恐ろしく低い声で、これが落ち着いたというよりもおどろおどろしい声なのである。「ただいま・・・留守にしております・・・ご用の方はこの留守番電話にメッセージをどうぞ・・・。」これがまるでオカルト映画の語りのようでとても怖いのである。特に途中の「・・・」の間が微妙に長くてますます怖さが。「やめてくれー」という感じになるのである。間違いなくこの声だとメッセージなんか入れる気にならないで、途中で切ってしまいそうである。
なんでもやりすぎるとなんだかおかしくなることがある。きっとこの電話を商品化するときに応答メッセージも拘ろうということになったはずである。企画会議で「落ち着いた女性の声」とかなんとかいう話になって、それを担当の方が「落ち着いた」にこだわりすぎて作ったのが誰にもチェックされないでそのまま商品化されてしまったのではないかと勝手に想像しているのだが、この電話機を作った会社の人に一度聞いてみたいものである。
完璧に出来すぎたものよりもこんなちょっとした間抜けなところがあって、この電話機がとても好きになった。
後日談:この電話機の怖い声の主はNHKの朝の連続ドラマ「カーネーション」で晩年の小原糸子役をしていた女優の夏木マリさんだそうです。困ったもんだと思っていた声の主が夏木マリさんだと思うとこれもいいなと思えてしまう私はミーハーなのでした(笑)。
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